okuru design/オクルデザイン

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まんぷくエッセイ vol.03

2025.05.21 | スタッフ雑記


  

同期の波多野は、口癖のように言っている言葉がある。
「okuru designをフードコートに例えると、わたしはカレー屋で、月ちゃんはラーメン屋」

その言葉を初めて聞いたとき、私は一瞬固まった。

「……え、なんで?笑」「私たちはデザイナーなのに?」
別にカレーを作っているわけでも、ラーメンを作っているわけでもない。
それに、私は特別ラーメンが好きというわけでもなかった。

でも、この言葉の意味がわかった瞬間、

この言葉がとても好きになった。

―― 今から3年前、私と波多野はokuru designの門を叩いた。
当時フリーランスで活動していた栗原のデザインに惚れ込み、
「勉強させてほしい」と猛アタックしたのだ。

私は5年間勤めていたデザイン事務所を退職し、波多野はインターンを経て、
2人でokuru designに入社した。

デザイナーとして、今年で私は9年目、波多野は4年目になる。
キャリアに差はあるものの、波多野は新卒のころから、
そんな差なんて飛び越えてくるほど、恐ろしくデザインセンスがズバ向けていた。

どんな絵でも、「描けます!」と即答し、求められたタッチを自在に表現する。
インプットもアプトプットも抜群にうまく、
何より、デザインに対してとても貪欲だ。

一方私は、5年のキャリアをもろに活かせているとは言いがたい。
絵を描くのは好きだけれど、何でも描けるほどの技術はない。
美的センスも、知的センスも、持ち合わせていない。

けれど、ひとつだけ確かなことは、
私も波多野と同じようにデザインが大好きだということだ。
デザインに対する想いはそれぞれ違うかもしれないけれど、
「デザインが好き」という気持ちに変わりはない。

私は「結婚よりもデザイナーを続けたい」と思っているほど、
この仕事が好きだし、天職だと感じている。

強いて自分の取り柄を挙げるなら……
「相手を喜ばせたい!」「どうやったら喜んでくれるだろう?」と、
誰かの笑顔を思い浮かべながら考えている時間が、人一倍好きだということだ。

たとえるなら、『モンスターズ・インク』のマイクのように。
いくら努力してもサリーのような一流の「怖がらせ屋」にはなれなかった彼が、
実は「笑わせ屋」としての才能に恵まれていたように―― 。

波多野のような絵が描けなくても、栗原のような美的センスを持っていなくても、
私は、自分が表現できるデザインの力で、最高の「喜ばせ屋」になりたいと思っている。

マイクがサリーになれなくても、マイクにしかできないことがある。
サリーはマイクになれなくても、サリーにしかできないことがある。

―― そう考えたとき、波多野が言っていた

「わたしはカレー屋。月ちゃんはラーメン屋。」という言葉が、ふっと腑に落ちた。
そして、その瞬間、この言葉がすごく好きになった。

カレーはラーメンにはなれないけれど、カレーにしかないおいしさがある。
ラーメンはカレーにはなれないけれど、ラーメンにしかないおいしさがある。

どちらが人気だとか、どちらがおいしいかなんて、ナンセンスだ。
お互い違って、お互い良いのだ。
時には力を合わせて、「カレーラーメン」として
さらなるおいしさを生み出せばいい。

スパイスの効いたカレーと、奥深いスープのラーメン。
それぞれでも十分おいしいけれど、組み合わさることで
新たな味わいが生まれる。

私たちオクルチームも同じだ。

「これ、お願いしていい?」
「ここ、こうしたらもっと良くなるかも!」
「なるほど、その発想はなかった!」

デザインの仕事は、ひとりで完結できるものではない。
それぞれが持つ「得意なこと」や「価値観」を大切にしながら、
時に掛け合わせ、新しいデザインを生み出していく。

お客さまとの関係も同じことが言える。
どちらかが一方的に決めるのではなく、お互いの意見を尊重しながら、
一番良い形を一緒に作り上げていくことが大切だ。

私たちは、そんな「カレーラーメン」のようなチームを目指して、
これからも、日々、腕を磨き続ける。

先日、この話題でちょっとしたディベートが勃発した。
ピンと来ていなかった宮崎や栗原にも、この話が伝わって、

いつか「私も◯◯屋かな?」なんて言い合える日が来たら嬉しい。
あなたも誰かと掛け合わせることで、
新しい何かが生まれるかもしれませんね。

「あなたは、何屋ですか?」

文・イラスト 杉本 月

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