okuru design/オクルデザイン

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まんぷくエッセイ vol.01

2025.03.28 | スタッフ雑記

  
 

  

okuru designに入社して、この4月で私と波多野は丸3年、新卒の宮﨑は丸1年を迎える。
そこで、先日オクルメンバーでおつかれさま会も兼ねて、
江坂に新しくオープンした「石窯料理とアンティークCotton」を訪れた。

 仕事を終え、自転車出勤組の私と宮﨑は、南吹田にある事務所から、薄暗い夜道を自転車で出発。店までは、まっすぐ進み、1回曲がってまたまっすぐ進むだけというなんとも簡単な道のりであっさりと到着。所要時間は約7分と嬉しい距離感だ。大通りに面したファミリーマートを目印に、木々が並ぶ裏道を進むと、ひっそりとたたずむ建物の窓から、キラキラとした光景が目に飛び込んできた。店の前に自転車を止め、窓越しに見える、おしゃれな店内で食事を楽しむお客さまを横目に、ちょっぴり緊張しながら店の扉を開けた。 

  

キャップ帽にエプロン姿の優しい表情をした店主さんが迎え入れてくれ、爽やかなホールスタッフが席へと案内してくれた。店内は、ぽってりとした温かみのある色のライトが吊るされており、やわらかい光に包まれていた。目線の先に見えるカウンターは、私が好きなフレンチレストランを舞台にしたドラマのカウンターに少し似ていて、「次は絶対あのカウンター席で食べに来よう」と心に決めるほど、一瞬で店内の雰囲気に魅了された。

金曜日の夜ということもあり、店内は満席。ぐるりと辺りを見回すと、6人組で楽しげにコース料理を味わうかわいらしいマダムたち、仕事帰りらしいスーツ姿の男女、おしゃれな20代女性、地元の人らしいラフな服装のご夫婦など、さまざまな年代の方が、入れ替わり立ち替わり訪れていた。

自転車で先に到着していた私と宮﨑は、メニューをひと通り眺めながら、すでにお腹を空かせていた。
少しして車組の栗原と波多野が到着し、早々にみんなでメニューを選んだ。

まず最初に前菜。次に楽しみにしていたピザ。ハーフ&ハーフが可能だったので、2枚注文した。他にも、蛸と芋のフリットやドリンクもオーダー。半数が少食ということもあり、パスタまで辿り着けるかと不安を抱きつつ、お腹と相談しながらメニューを決めていくことにした。

先に届いたドリンクを飲みながら料理を待っていると、ボリューム満点の前菜が運ばれてきた。うろ覚えだが、オニオンサーモンのカルパッチョ、ホタテとポテトのバジル和え、ホタルイカと菜の花のアーリオオーリオ、ローストハム、ローストビーフ、クルトン入りポテトサラダ……
思い出せるだけでも6種類ほど並ぶ豪華な一皿だ。

サーモンのカルパッチョは玉ねぎが驚くほど甘く、感動した。上にはプチプチのとびこがのっていて、口の中が幸せでいっぱいになった。ポテトサラダにクルトンの組み合わせも最高で、「クルトンってあるとうれしんだよな~」と心の中でにんまりしていると、栗原が「家にクルトンが常備されていて、サラダにかけている」と話してくれた。なんと業務スーパーで買えるらしく、家で簡単にクルトンが楽しめるらしい。
「家でクルトン食べれるんだ!」と驚きつつ、頭の中でクルトンを使った料理をぐるぐる巡らせた。

贅沢な前菜を食べ終えると、すでに満足感でいっぱいだったが、続いて蛸と芋のフリットが運ばれてきた。カラッと狐色に揚げられた、見ているだけで食欲をそそるビジュアルがたまらない。まずは芋から。ほくほくで甘みが強い芋に、程よい塩気がちょうど良い。口の中の火傷を覚悟しながら、熱々を頬張ってしまう。蛸はプリップリでコリコリした食感。揚げ物なのに全く脂っこくなく、いくらでも食べたいくらいだった。
……とはいえ、後に控えるピザとパスタのことを考え、ここはグッとこらえてセーブしておくことにした。

ピザを待っている間、隣の席のかわいらしいマダムたちが、楽しそうに記念写真を撮っていた。波多野が「撮りましょうか?」と声をかけると、とても嬉しそうにお願いしてくれた。そんな光景を見ながら「なんかいいな~。歳を重ねても、友達同士でおいしいご飯を食べていたいな」とあたたかい気持ちになった。

そうこうしている内にボリューム満点のピザが運ばれてきた。ハーフ&ハーフのピザ。半分は定番のマルゲリータ、もう半分はシーフード。どちらも4等分にカットされていて、4人で1枚ずつシェアできるのが嬉しい。マルゲリータは、チーズのコクとトマトの酸味が相性抜群。シーフードは、イカやエビがたっぷりと入っていて、しっかりとした食べ応え。生地は、三角の先端部分は薄めだけど、耳の部分はしっかりと肉厚。もちもちカリカリの食感が病みつきになりそうだ。

もう1枚のハーフ&ハーフピザは、ジェノベーゼ&明太アボカド。ジェノベーゼは、バジルの効いたソースに、ゴロゴロとしたお肉と黒オリーブがたっぷり。食べ応えがあって、「きっとワインが飲みたくなる味わいなんだろう」と、ワインを片手にピザを頬張るお客さんを見て思った。

そして、驚いたのが明太アボカド。とろとろに焼けたアボカドが、今まで食べたアボカドの中で1番おいしく感じた。明太ソースとの相性も抜群で、次に来たときも絶対にリピートしたいおいしさだった。まんぷくなことも忘れて、気づけばぺろりとたいらげていた。

残すはパスタ……。お腹はすでにいっぱいだったけれど、まだ余裕のある宮﨑と栗原が多めに食べてくれるとのことで、「せっかくだし、パスタも頼もう!」という流れになった。まんぷくの私と波多野に気を利かせて、宮﨑が「食べやすいリガトーニのパスタはどう?」と提案してくれた。太めのショートパスタなら、少しずつ食べられて負担が少ないと考えてくれたのだろう。

しかし、太いショートパスタよりも細い麺の方が食べやすいと感じた私は、「麺がいい」と答えた。すると波多野も「麺が食べたい」と言った。お腹いっぱいの私たちのことを考えて提案してくれたのに、結局、自分たちが食べたい麺を選んでしまった。少し落ち込む宮﨑の顔をみて申し訳なくなりつつ、それでも自我を押し通す自分たちに思わず笑ってしまった。

結局、まんぷくコンビのわがままを聞き入れてくれ、カルボナーラを注文した。

運ばれてきたカルボナーラは、白く滑らかなクリームに包まれた、美しい一皿。「まんぷくの2人から取り分けていいよ」と言われたので、私たちはお弁当に入っているカップのパスタくらいの量をお皿にのせた。9割ほど残ったパスタは、宮﨑と栗原が2人で分けてくれた。「みんなで食べに来ると、いろんな料理をちょっとずつ味わえていいな~」と感謝しつつ、気持ち程度のカルボナーラをじっくりと味わった。

しっかりと麺に絡んだクリームは濃厚で、ベーコンの旨みと黒胡椒のスパイス感が絶妙。普段あまりお店でカルボナーラを食ることがなかった私は、クリームの奥に広がるベーコンと黒胡椒の風味に、心の中で思わず感激してしまった。

最後にデザートとしてガトーショコラを1つ注文し、各々ドリンクを選んだ。食後のドリンクは、栗原以外全員「水」を選び、コーヒーも紅茶も頼まなかった。すると栗原が「信じられない…」と言いたげな表情で、一人コーヒーを注文。

勧められたドリンクを無理に選ばず、自分たちが飲みたいものを選べる空気感に、少し嬉しく思っていたことは内緒である。もちろん、少し無理をしてでも受け入れたほうがいい場面もあるけれど、今日はそういう堅苦しい気遣いはなしで、各々が自由に思ったことを発言できる。そんな関係が「なんかいいな…」と、ほっこりした。

 

お腹も満たされて、食後は少しの眠気を感じつつ、ゆったりと過ごした。途中、波多野がよく話す「カレー屋とラーメン屋」の話題になった。話の内容にピンと来ていない宮﨑と栗原、対する私と波多野。気づけば、ちょっとしたディベートが勃発していた。まさかこの話でこんなに白熱するとは思わなかったが、私は波多野のこの話がお気に入りなので、またいつか、今読んでくれている人にも改めて話そうと思う。

気づけばすっかりいい時間になり、店内には私たちだけが残っていた。余韻を感じながら席を立つと、ちょうど店主さんがいらっしゃった。自己紹介をし、「料理がとってもおいしかったこと」、「okuru designの事務所からとても近いこと」など少し話をした。

店主さんが店の外まで見送りにでてくれ、「また絶対食べに来ます」、「自転車組は自宅まで10分圏内なんです」。なんて会話をしていると、店先に並ぶ印象的な木々が桜の木だと教えてくれた。

「この道沿いにカフェができたり、もっと賑やかになるといいな~」。そう話す店主さんの言葉に、ふと想像が膨らむ。桜並木沿いにお店が立ち並び、人々が行き交う光景が頭の中に広がり、心がぱっと明るくなった。目に映る静かな夜道と、思い描いた賑やかな光景。そのコントラストが眩しくてワクワクした。

マップを確認し、心もお腹も満たされながら自転車を漕ぐ。木々に囲まれた見知らぬ夜道に少し不安を感じながら進んでいると、やがて明るい道が見えてきた。ほっと胸をなでおろしながら暗闇を抜けると、そこはなんと、いつも通っている通勤路だった。

 

春になると、桜の木々がトンネルのように咲き誇る、よく知る道。毎年その桜を眺めながら、「この桜道の奥には何があるのかな?」と思いつつも、先の見えない暗闇が怖くて、一度も通ったことはなかった。まさか、その先に、あんな素敵なお店があるなんて。

まるで『耳をすませば』の月島雫が、偶然たどり着いたアンティークショップ「地球屋」みたいじゃないか。
しかも、Cottonさんのお店の名前には“アンティーク“が入っている。この偶然には心が踊った。ジブリファンの私は、帰り道、月島雫と同じ気持ちを味わえたような気がして、なんとも言えない幸福感に包まれた。いつもは暗く感じる川沿いも、川面に反射する街灯がキラキラと輝き、今夜はいつもより明るく見えた。

心もお腹もまんぷくで、今日はきっと、眠れない。
今年の春は、あの桜のトンネルをくぐって、おいしい料理をお腹いっぱい食べに行こう。

桜が咲く頃にまた……
 

文・イラスト 杉本 月

「石窯料理とアンティークCotton」
〒564-0043大阪府吹田市南吹田5-24-5

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